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2024/11
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誾千代の形良い眉が歪む。
それに宗茂が、ふっと笑うと誾千代の眉はますます歪んでいく。

「――何かと思えばそんなことを」

思い出した、と急に部屋に現れた夫が言ったことは、たわいもないささいなこと。
そんなことをわざわざ言いに来たのか、と誾千代は呆れたように部屋に入ってきた夫を見る。そんな妻の視線など気にもせず、宗茂は妻の前に腰を下ろすと、

「こういうのが結婚した、ということかもしれないな」

などを言い出す。
意味が分からないとばかりに無言で訝しげな視線を向ける誾千代に、

「以前はお前に伝えようとしたことを思い出しても、文を出すほどのことでもないし、今度会った時に伝えればいいかと思っても、その時にはすっかり忘れている。で、帰った後に思い出して、後悔する。でも、結婚して共に暮らしていればすぐに伝えられる。それが結婚したということだと思ったんだ」
「――もう少し簡潔にまとめられないのか?」

誾千代は、すげない一言を投げる。

「冗長か?」
「冗長だ!」

そんな誾千代に、情緒がない奴だな、と宗茂はわざとらしい溜息をひとつ。

「お前にはないのか?」
「何が?」
「俺が言ったようなこと」
「――ない」

一瞬の間の後にきっぱりと言い切った誾千代に、ふぅんと宗茂は少し含みのある声で唸った。
それが誾千代には気に入らなかったらしく、キッと睨みながら、

「伝えたのならもう用はないだろう?!」

出て行け、とばかりに手で払うような仕草をするのが、まるでそれを待っていたかのように宗茂は、その手に掴もうとするように差し出してくるので、驚いて誾千代は手を引く。

「何だ?!」
「これもまた結婚した、ということだな」
「何だか?!」

宗茂が、いつになくにっこりと微笑むので、誾千代は瞬間何かを感じ取ったのか、身を固くする。

「触りたくなったら、すぐに触れる」
「――はぁ?!」

誾千代が声をあげたのと同時に、じりじりと宗茂が距離を縮めてくる。



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