忍者ブログ
2024/11
< 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

なんだかとても心地良い。

ゆらゆらと夢か現か、その境界線を彷徨う。
夕餉の後からやたら眠たくて仕方なかった。
宗茂と合わせた稽古でした怪我の痛みで眠れない夜が続いたので、さすがに体が限界だったのだろうと思い、夕餉の後、すぐに眠りにつき、ふっと覚めたが、夢現の状態はとろとろに溶けていくようで、気持ちがいい。
今の自分は、きっとあの子猫みたいなのだろう、と誾千代はぼんやりと考えた。
昼間、庭の生垣近くに猫の親子がいた。
小枝が折れるような音がしたので、何だろうと音がした方へ行けば、親猫と子猫2匹がいた。じゃれあう子猫を親猫がじっと眺めている。
よく庭で見かける猫だ、と誾千代は猫たちを見た。侍女の誰かが世話をしているらしく、我が物顔で庭にいついてしまっている猫たち。
誾千代が近づいても逃げもしない。
親猫は一度だけ誾千代を見上げたが、すぐに子猫たちに視線を戻す。
小枝が折れるような音は、じゃれあう猫たちがたてた音か、と誾千代も子猫たちを見下ろす。
楽しげにじゃれあう子猫たちだったが、1匹が興奮しすぎたのか、もう1匹を噛んだ。
痛かったらしく、ニャアッ!と声を上げた噛まれた子猫が、まるで親猫にいいつけるように近づいていけば、親猫は、その子猫が噛まれた部分を舐めてやる。
ぺろぺろと舐められる猫は、それで痛みなど吹き飛んでしまったらしい。
噛んだ猫も羨ましくなったのか親猫に近づき、親猫は交互に2匹を舐めてやっている。
それを誾千代は眺めながら、

「いいな・・・」

つい呟きが落ちた。
怪我がじんじんと痛む誾千代には、気持ちよさそうな子猫たちが羨ましかった。きっと大好きな親猫に舐められ、安心できて、とても気持ちが良いのだろう。
そんなことを思い出して、睡魔でふわふわするこの感覚が気持ちよくて、誾千代はあの子猫たちになったような気持ちになって、そういえば、そんな夢を見たような・・・。
今だって、何かに包まれているようなそんな心地よさがある。
ふふふっ、と思わず笑みがこぼれた時、

「起きたのか?」

声がした。誰、と聞かなくとも分かる。宗茂だ。
それで何か包まれている――そう思ったのは事実包まれていたのだと気付いた。
宗茂に抱かれていた。きっと目を開けば目の前には宗茂の胸がある。
普段なら飛び起きるところだが、今は出来ない。そんな敏捷な動きがとれるような状態でないことに気付いた。意識と身体がまるで別物のようで、身体はまだ眠りについているかのようなだるさなのだ。
余程自分は痛みで体が睡眠を欲していたらしい。本当に熟睡していたらしい。
瞼は開けそうだが、それはやらない。
とりあえず、まだ寝ている振りを続ければ、

「――・・・猫千代」

と呼ばれた。

(猫?!)

と思いながらも眠った振りを続行する。
すると、ぺろりと頬を舐められた。思わず振り払うように寝返りをうってみれば、

「昨夜は気持ちよさそうにしてたんだけどなぁ」

宗茂が言う。
昨夜、ということはもう明け方近いのかもしない、と冷静に思う誾千代と、熟睡している時にも舐められていたらしいことに動揺する誾千代がいる。
せっかくうった寝返りも、宗茂がふわりと元に戻してしまう。
すると、再び舐められた。顔だけ背けてみても、舐められる。
舐められるどころか、寝着の帯を宗茂が緩めた。
手馴れた手つきで、誾千代の上半身を裸体へとしてしまう。

「痣になってるのか」

宗茂がぽつり零す。怪我をした部分を気にしているらしい。
眠った振りを続けながら、誾千代は後悔する。今起きたことにするか、けれど、そうすればきっと――、いや、もう明け方近いのならさすがに侍女たちが起こしにくることを考えてやらないか、けれど――。
いろいろ考えをめぐらせていた誾千代だったが、再びぺろりと頬を舐められて、とりあえず寝た振りを続けることにした。

512285ed.PNG











「昨夜は猫みたいで可愛かったんだけどな」

宗茂が耳元で囁き、また、頬を舐める。

(こいつ、起きていることに気付いている?!)

けれど、今更起きれない。体はまだだるい。
起きなければ、先に進めるつもりはないだろうと誾千代は、寝た振りを続けるが、宗茂はなんだか楽しげで、

「猫千代、起きろよ。したい。怪我にさわらないようにやるからさ」

などを言うので、誾千代は窮屈な腕の中から逃れるように寝返りを再びうつが、また、宗茂が元に戻され、また頬を舐められる。

今更起きれない。起きたらまるで、自分もしたいかのようだし、かといってこのままだとしても――。

早く夜が明け切って、侍女たちが起こしにきてくれないだろうかと誾千代は願う。



宗茂視点

拍手

PR
忍者ブログ [PR]