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はぁ・・・と幸村が溜息を落とす。それを稲は、呆れながらちらり一瞥する。
「何度目ですか、その溜息」
「そんなに溜息をついてましたか?」
「無意識?!」
稲はまた呆れて、わざと溜息してみせる。
幸村は兄である信幸を訪ねてきたのに不在。
帰りを待っている間、溜息ばかりついているのだ。
「義姉上だって・・・」
「溜息ばかりついている人が近くにいれば、こちらだって溜息つきたくなりますよ」
ふんっと稲が顔を反らせば、幸村は笑う。ひとしきり笑った後、
「兄上に会いに来たのに、なぜ義姉上の相手をしなければいけないのか」
「それはこちらの台詞です!」
稲はキッと義弟を睨む。
「突然いらっしゃって、信幸さまにもご都合があるのですから。私だって‐」
稲の小言など聞こえないかのように幸村は、再び溜息。
イラッとした稲が、「また溜息!」と注意すれば、
「何か言いました?」
にこりと素知らぬ振りをする。
「信幸さま?」
出先から戻れば、弟が来ていると家臣から聞かされ信幸が、幸村が待つ部屋に向かう途中、足を止めた。
それに気付いた家臣が、首を傾げながら信幸を見れば、
「話が盛り上がっているようだから、もう少し後にしよう」
くるりと踵を返してしまう。
確かに部屋からは稲と幸村の声がする。
けれど、家臣には決してそれが楽しそうには聞こえず、また首を傾げて、ふと気付く。
(あぁ、信幸さまは、今入って面倒に巻き込まれたくないのか)
去っていく信幸の背と、部屋から聞こえてくる稲と幸村のやりあう声を聞きながら、家臣は溜息する。