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ち、と言われ最初宗茂は、何を言われたのか分からなかった。
意味が分からず妻を見れば、手にしていた書状を誾千代に取り上げられる。

「血!血が出ている!指!」
「あぁ、血か」

見れば、右手の人差指の先が切れて、血が滲んていた。いつ切ったのだろう。

「痛いな」
「今まで気づかなかったくせに何を言う」

誾千代は、書状に血がついていないか確認しながら、

「手を洗ってこい」
「普通、大丈夫とか優しく聞いてくれるものではないのか?」

そう言えば、じろり睨まれる。
怖いな、と呟きを残して言われた通り手を洗い、部屋に戻れば誾千代はちらり一瞥だけくれた。

「血は止まったか?」

宗茂は指の先を見る。一応止まってはいるがすぐにまだ出てくるだろうと思いながら、あぁと答えれば、誾千代は右手を左の袖口に入れ、ごそごそを袖巾から小さな入れ物を取り出して渡してくる。

「軟膏だ。血止めにもなる」
「お前、こんなものを持ち歩いているのか?」

誾千代は答えない。
稽古やなんだかんだと生傷が耐えない誾千代だからな、と宗茂は納得して、軟膏を受け取ろうとして止める。

「塗ってくれ」
「はっ?!」

眉をひそめて自分を見てくる誾千代に、宗茂は指を差し出す。
誾千代は、塗る気はないと軟膏をぽんと宗茂に投げつけるが、宗茂はそれを同じように誾千代に投げ返し、三度ほど繰り返して面倒になったのか誾千代は軟膏の蓋を開く。
溜息をつくような重さで宗茂を見ながら、夫の手を取る。
軟膏を取り、宗茂の指に塗る動作が優しくて、宗茂は意外な気がした。

「なんだか・・・」
「何だ?!」
「夫婦っぽいな」

ふと手を止めて誾千代は、宗茂を見る。
言われた意味が分からないのか、珍しくきょとんとした顔をしている誾千代に、

「妻に看護してもらう。それが夫婦っぽいと思った」
「これが看護というほどのことか」

呆れたように眉をひそめて、誾千代は軟膏を塗り終え、宗茂の手を離す。
誾千代が軟膏の蓋をしたのを確認したところで、

「お前も、血が出ているぞ」

宗茂が言う。それに誾千代が反応するよりも早く彼女を手を取り、腕に抱き込めると、彼女が怒りに顔を上げた瞬間、その唇を塞ぐ。誾千代の手から、軟膏が滑り落ちた。

「――っ!」

抵抗されたのは一瞬のこと。
あとは、面倒なのか大人しく身を任せるので、ふっと唇を離せば、誾千代に睨まれる。

「唇から血が出ていた」
「よくもまぁ、そんな嘘を・・・」

腕から逃れようとする誾千代をぐっと引き寄せ、耳元に唇を寄せると、

「もう少し夫婦らしいことをしないか?」

と囁く。妻の返事など宗茂は聞く気はないので、再び文句を言われる前に、その唇を塞ぐ。






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