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目が覚めたのは、頭の芯からこめかみのあたりに抜けていく、何か重く、ずんとした痛みを感じたから。
誾千代は、眉間を渋く歪めつつ、瞼を開いた。
「ここは・・・」
視界が滲んだかと思うと、またこめかみに痛みがが走る。
二日酔いが意識を、視界を濁らせる。
やがて、ぼんやりと晴れていく視界の中、見えたのは立花の陣だ。
見慣れた光景。
だけど―、ここは普段自分が寝ている場所ではない。
ここは宗茂の宿所――。
「頭痛い・・・」
呟いて溜息――。
上半身を起こしてみる。
そっと周りを見渡せば遠くに人の気配を感じるものの、ここにはひとり。
宗茂は?
口には出さず、口腔で呟く。
そのまま、無に似た静けさがふわりと誾千代を取り巻く。
この静けさは、音のない雨が降り続いているようだと思った。
しばらくぼんやりとしていたが、起き上がって、着衣を整える。
見ればきちんと寝着を着ている。
昨夜――。
宗茂に支えられ、ここまで戻ってきたことは覚えているが、その後は記憶がない。
なのに、宗茂の掌のぬくもりは覚えている。
髪を、頬を撫でられ、その心地よさに瞼を閉じ、そのまま眠りに落ちた。
眠った後に着替えさせられたのか?
そう思った瞬間、顔が赤くなったのが分かった。
今更、夫婦なのだから―、そうは思うが、やはり恥ずかしい。
ふと人の気配を感じ、振り返る。
「――っ!」
振り返った瞬間、頭がずきずき痛んだ。
こめかみをおさえると、軽くククッ笑われた。
「目が覚めたか」
そっと竹筒に入った水を渡され、無言で受け取り、一口口に含む。
飲んでから、喉が渇いていたことに気づき再度口に含む。
「昨日のこと覚えているか?」
「――何かあったか?」
知らんぷりをする。
「ひどく酔ってた」
「そうか・・・」
「様子がおかしかった」
「だから、私はひどく酔っていたのだろう?」
覚えていない――そう言って誾千代は、硬く表情を閉ざした。
それを見て宗茂の唇に苦笑が浮かんだ。
もうこれ以上その話をするつもりは誾千代にはないらしいと判断すると、
「あまり呑みすぎるなよ」
と、宗茂は言うと、誾千代の髪に一瞬触れる。
「外は雨か?」
「あぁ・・・」
「北条に何か動きはあったのか?」
「いや、何も聞いていない。和睦の使者が何度が行ったらしいが・・・」
「そうか・・・」
その時、外で強い風が舞ったらしいヒュンという音に気を取られた。
「いつまで意地を張っていられるか・・・」
「えっ?」
「ん・・・?」
一瞬、自分に言われたのかと誾千代は思ったが、宗茂は北条のことを言ったらしい。
いや、もしかしたら両方を併せて言ったのだろうかと瞼を伏せると、握りしめていた竹筒をそっと取られる。
「顔色が悪い。まだ横になってろ」
「あっ、宗茂」
出て行こうとしていた背に誾千代は声をかける。
「着替えは・・・お前が?」
「俺以外に誰がやると思う?」
「――・・・すまない」
「いや、普段なかなかゆっくり拝ませて貰えないから楽しませてもらった」
「――っ!!!」
にやりと頬を揺らしながら、からかうように誾千代を見てくる。
誾千代は一気に体温が上がった気がして、背を向けて、上掛けを頭までかぶると宗茂から姿を隠す。
すると、声を出して宗茂が笑った。
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誾千代は、眉間を渋く歪めつつ、瞼を開いた。
「ここは・・・」
視界が滲んだかと思うと、またこめかみに痛みがが走る。
二日酔いが意識を、視界を濁らせる。
やがて、ぼんやりと晴れていく視界の中、見えたのは立花の陣だ。
見慣れた光景。
だけど―、ここは普段自分が寝ている場所ではない。
ここは宗茂の宿所――。
「頭痛い・・・」
呟いて溜息――。
上半身を起こしてみる。
そっと周りを見渡せば遠くに人の気配を感じるものの、ここにはひとり。
宗茂は?
口には出さず、口腔で呟く。
そのまま、無に似た静けさがふわりと誾千代を取り巻く。
この静けさは、音のない雨が降り続いているようだと思った。
しばらくぼんやりとしていたが、起き上がって、着衣を整える。
見ればきちんと寝着を着ている。
昨夜――。
宗茂に支えられ、ここまで戻ってきたことは覚えているが、その後は記憶がない。
なのに、宗茂の掌のぬくもりは覚えている。
髪を、頬を撫でられ、その心地よさに瞼を閉じ、そのまま眠りに落ちた。
眠った後に着替えさせられたのか?
そう思った瞬間、顔が赤くなったのが分かった。
今更、夫婦なのだから―、そうは思うが、やはり恥ずかしい。
ふと人の気配を感じ、振り返る。
「――っ!」
振り返った瞬間、頭がずきずき痛んだ。
こめかみをおさえると、軽くククッ笑われた。
「目が覚めたか」
そっと竹筒に入った水を渡され、無言で受け取り、一口口に含む。
飲んでから、喉が渇いていたことに気づき再度口に含む。
「昨日のこと覚えているか?」
「――何かあったか?」
知らんぷりをする。
「ひどく酔ってた」
「そうか・・・」
「様子がおかしかった」
「だから、私はひどく酔っていたのだろう?」
覚えていない――そう言って誾千代は、硬く表情を閉ざした。
それを見て宗茂の唇に苦笑が浮かんだ。
もうこれ以上その話をするつもりは誾千代にはないらしいと判断すると、
「あまり呑みすぎるなよ」
と、宗茂は言うと、誾千代の髪に一瞬触れる。
「外は雨か?」
「あぁ・・・」
「北条に何か動きはあったのか?」
「いや、何も聞いていない。和睦の使者が何度が行ったらしいが・・・」
「そうか・・・」
その時、外で強い風が舞ったらしいヒュンという音に気を取られた。
「いつまで意地を張っていられるか・・・」
「えっ?」
「ん・・・?」
一瞬、自分に言われたのかと誾千代は思ったが、宗茂は北条のことを言ったらしい。
いや、もしかしたら両方を併せて言ったのだろうかと瞼を伏せると、握りしめていた竹筒をそっと取られる。
「顔色が悪い。まだ横になってろ」
「あっ、宗茂」
出て行こうとしていた背に誾千代は声をかける。
「着替えは・・・お前が?」
「俺以外に誰がやると思う?」
「――・・・すまない」
「いや、普段なかなかゆっくり拝ませて貰えないから楽しませてもらった」
「――っ!!!」
にやりと頬を揺らしながら、からかうように誾千代を見てくる。
誾千代は一気に体温が上がった気がして、背を向けて、上掛けを頭までかぶると宗茂から姿を隠す。
すると、声を出して宗茂が笑った。
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