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※結婚前設定で。
夏の照りつける日差しが、地面を包み込み、温度を上げる午後。
暑い、と誾千代が心底嫌そうな声で言うのが聞こえた。
誾千代の稽古につき合わさせられた後、縁で涼んでいた。
隣を見れば誾千代が手拭いで汗を拭いている。
顔をふいてから、喉元、そして襟を少し開いて――。
慌てて宗茂は顔を反らす。
自分が見ていることなど気付いていないのか、ただ気にも留めていないのか。
けれど、確かに暑いだろうと思った。
宗茂の目はしっかりと誾千代の胸に巻かれた白い晒を捉えていた。
それに、かすかに開かれた襟元から覗いた白い肌。
普段陽に当たっている部分と、そうでない部分とでくっきりと色を変えている。
それが宗茂には妙になまめかしくて、慌てて顔を反らさせた。
そうだ、こいつは女だった。
知っているつもりだったが、妙に今日はそれが生々しく感じられる。
宗茂、と呼ばれて、何だ、とだけ軽く返事をする。
「暑いな…」
「そうだな」
「お前も顔が真っ赤だ。暑苦しい」
からかうつもりに言っただろう誾千代の言葉だったが、宗茂は内心焦った。
「井戸で水でも浴びてくる」
そう言って立ち上がると、「私も」と誾千代がついてくる。
「お前――」
言いかけて宗茂は口を閉ざした。
少しは女だって意識しろ、と言いかけた。
それを言えば誾千代が怒ることは分かっている。
けれど、それ以上に――自分が誾千代を意識しているようだと宗茂は思った。
宗茂は、不思議そうに自分を見てくる誾千代から無言で顔を反らした。